マーマレードをつくる、これぞ"至福の時"

英国の一年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

前回に引き続き「マーマレード」について。

英国バッキンガムシャー在住の英国政府公認ブルーバッチ観光ガイド木島・タイヴァース・由美子さんが、年始めに自宅で作るマーマレードについてお話いただきました。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!

前回の記事で、世界中から集まるマーマレードの祭典とコンテストについてお話しましたが、
阪急うめだ本店 英国フェア2018でもマーマレードコンテストが開催されました。

阪急うめだ本店 英国フェア2018でのマーマレード審査の様子

<<阪急うめだ本店 英国フェア2018 マーマレードコンテスト>>
阪急うめだ本店 英国フェア2018で開催されたマーマレード・アワードのコンテスト。
日本全国から集まったマーマレードを、ダルメイン城主の奥様でマーマレード・フェスティバルの発起人であるJane Hasell-McCosh夫人と共に、審査しました。
日本では"セヴィル・オレンジ"は手に入らないため、ほとんどが他の柑橘類で作られたマーマレードでした。
日本では実に多くの種類の柑橘類が栽培されているので、それらを使ったマーマレードは私にとって珍しく、貴重な体験でした。
(あらためて考えると、オレンジが育たない英国でマーマレードが名物になっているという事実をおもしろく感じます。)
審査でご一緒したJane夫人も、今まで英国では食べたことのない柑橘類を使って作られたマーマレードに、興味を示されていました。
ダルメインで開催される世界のマーマレードコンテストでは、ここ数年日本から"柚子のマーマレード"のエントリーが多くなってきています。

写真上:キッチンでブレッド&バター・プディングをサーブしているメアリー
写真下:メアリーが作ったお菓子たち(木島さんの著書「イギリス人は甘いのがお好き」に掲載)

<<友人のメアリーから教わった、マーマレード レシピ>>

私にマーマレードの美味しさを教えてくれたのは友人のメアリー。

90歳を超えた今も、ステキな女性です。彼女はシェフの資格を持っています。4人の子供を育てながら、マーマレード、ジャム、チャツネ、ケーキ、ビスケットなど可能な限り"ホームメイド"を貫いてきました。そんな彼女のレシピは、「時間をかけずにシンプルで美味しいもの!」に徹しています。

オレンジは、丸ごと煮れば皮も簡単に切れます。
「見た目はちょっと良くないけど、こっちのほうが美味しいのよ。」
と自信ありげな彼女のマーマレードを初めて食べたのは、もう20年以上も前のことです。
そのマーマレードは、今までスーパーで買っていた市販のマーマレードとは全く異なるものでした。


メアリーの作ったマーマレードをのせたトーストを一口かじると、オレンジの香りが口の中でブワッと広がり、体全体がすっぽり包まれたような衝撃を受けたのを今でも覚えています。こんなに美味しいマーマレードが自分でつくれたら・・・と、さらに自分に合ったレシピを編み出して今日に至っています。

写真上 至福の時① 暗くて長い英国の冬の夜に、セヴィルオレンジの皮を刻みます
写真下 至福の時② 皮をじっくり、時間をかけて煮込むのがコツ

<<マーマレードをつくる、至福の時>>
では実際に、私の自宅でマーマレードを作っていきましょう。
まずは、前回冒頭でお話した英国伝統のマーマレードづくりに欠かせない"セヴィルオレンジ"の皮を刻んでいきます。

1年分のマーマレードを作るので、すごい量になります。
毎年買う量は異なりますが、少なくとも約10キロ分のセヴィルオレンジを使います。
1個が150グラムとして、およそ65個くらいでしょうか。
※過去、スーパーに注文したところ、間違って30キロ配達されたことがありました!(約200個弱!?)返してしまうのがはばかられ、半分は冷凍して1年中マーマレード作りをしたことがあります。(笑)

セヴィルオレンジが市場に出回る1月~2月初旬の間に、日を分けながら作ります。私にとって、マーマレードを作る時間は"至福の時"です。
長くて暗い英国の冬、早朝に起き出して作るマーマレードは家中をオレンジの香りで満たしてくれます。私のマーマレードを心待ちにしてくれる人々の顔を思い浮かべながら、好きな音楽を流し、セヴィルオレンジの皮を刻んで、じっくり時間をかけて煮込んでいきます。

写真上 トーストにたっぷりマーマレードをのせて、一日がスタート
写真下 紅茶とマーマレードの相性は、絶妙です

<<完成したマーマレードを楽しむ>>
私の朝ごはんは、必ず自分で作ったミューズリ(※)とトースト、紅茶のセットです。
※木島さんお手製のシリアル

トーストは半分に切って、片方にマーマレード、片方にマーマイトを塗ります。
マーマイトはヴィーガンに不足しがちなビタミンB12を含んでいます。健康のためです。
先にマーマイトを食べ、次にマーマレードを食べます。
マーマレードがとっても美味しくて、つい無意識に2枚目のトーストをトースターにセットしてしまいます。

サラダドレッシングにもマーマレードを使います。
ドレッシングも市販のものは使わず、自分で作ります。
マーマレードは皮ごと入れます。
和風でも中華風でも、美味しく楽しめます。

Q:木島さんは"ヴィーガン"なんですね!

木島さん:はい。英国とヴィーガンについてのお話も、またお伝えできれば・・・と思います。
<<たくさん作ったマーマレードは、友人や親戚におすそ分け>>
ご近所の一人暮らしの男性は、マーマレードがなくなると空のビンを持って来るので、新しいものと交換します。私の息子のお嫁さん、彼女の父はアメリカ人ですが、朝は茶葉で淹れたアッサムの紅茶と、私の作ったマーマレードをのせたトーストで一日が始まるそうです。息子たちが英国の私の家に来ると、スーツケースに沢山のマーマレードを詰めて、持って帰ります。

マーマレードを作りながら、これまでの一年、これからの一年のことを考えます。

今年こそは世界中自由に行き来できる年に!
そして何より世界が一歩でも平和に近づく年になりますように!
と願いながら・・・


<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>

英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。
2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、
アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。
現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、
文化に関してのオンライン・トークを実施している。
バッキンガム州で夫、愛犬の3人暮らし。
その他、雑誌や新聞に寄稿。著書に『小さな村を訪れる歓び』
『イギリス人は甘いのがお好き』がある。


カルチャー・ツーリズムUKのホームページを見る


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