『マザーリング・サンデー(Mothering Sunday)』の伝統菓子"シムネル・ケーキ"

英国の一年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

先週に続き、英国の母の日『マザーリング・サンデー(Mothering Sunday)』について。

前回の記事では英国バッキンガムシャー州在住の英国政府公認ブルーバッチ観光ガイド木島・タイヴァース・由美子さんに、英国と日本の母の日の違いを中心にお話いただきました。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!

シムネル・ケーキ

シムネル・ケーキは現在ではイースターのお菓子という印象ですが、英国やアイルランドでは『マザーリング・サンデー』の伝統菓子でもあります。
アーモンドペースト、またはマジパンをフルーツケーキでサンドイッチにし、ケーキの上にマジパンで作った"11個の玉"をのせたものです。この"玉"は、キリストの12使徒を表していますが、通常キリストを裏切ったユダは除かれますので"11個"というわけです。

Q:なぜ、シムネル・ケーキが英国やアイルランドでは『マザーリング・サンデー』の伝統菓子、とされているのでしょうか?

木島さん:
昔は『マザーリング・サンデー』には人々が実家へと帰省し、母教会(※)や近くの大聖堂のミサに出席しました。
※昔から通っている故郷の教会。
大きなお屋敷で働くメイドさんも、この日はお休みをいただいて実家に帰省しました。そんな時にお土産として持って帰ったのがシムネル・ケーキでした。
お土産として多かったのは食べ物やお菓子でしたが、中でも特に人気が高かったのがシムネル・ケーキです。
その理由は、イースター前の断食期間中、一時的に断食を緩くする日が『マザーリング・サンデー』でした。
昔は食料がふんだんにあったわけではなく、そんな時に栄養とカロリーが高く、エネルギーになるシムネル・ケーキが多く選ばれていました。

その後、シムネル・ケーキは時を経てしだいに『マザーリング・サンデー』よりもイースターの食べ物として有名になりました。
(20世紀に入るとお屋敷に奉公に行く人が少なくなり、この習慣があまり見られなくなったせいかも?)
「シムネル」の言葉の意味、由来には色々あって正確なところはわかりません。
中にはサイモンとネル(Simon and Nell)夫妻がケーキの作り方で意見が合わず、妥協して作られ2人の名前をつなぎ合わせたのがシムネル・ケーキ。という、洒落のような逸話もあります。
母の日のメッセージカード


英国では、クリスマスや誕生日をはじめとした特別な日にカードを贈ることが習慣になっています。
特に、収益の一部、または全額がチャリティに寄付されるカードが人気です。
地球環境の改善につながる事を意識した、母の日カード

最近では、地球環境の改善を意識したカードも出てきました。
カードが1枚売れるたびに、世界のどこかで木が1本植えられます。

さらにはカードの中に野生の花の種が入っていて、それを庭や植木鉢に植えると花が育ち、現在減少が問題になっている蜂のためになる、というカードです。
私がそんなカードを子供たちから母の日に贈られたら、「このカードで世界のどこかに木が植えられたのだな」と想像しながら、喜びもひとしおです。



<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>

英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。
2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、
アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。
現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、
文化に関してのオンライン・トークを実施している。
バッキンガム州で夫、愛犬の3人暮らし。
その他、雑誌や新聞に寄稿。著書に『小さな村を訪れる歓び』『イギリス人は甘いのがお好き』がある。


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