水に感謝する伝統行事「ウェル ドレッシング」(後編)

英国の1年を、時候に沿ってお届けする【英国365日】。

前回に引き続き、英国の「Well Dressing(ウェル ドレッシング)」について。
英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドで、バッキンガムシャー州在住の木島・タイヴァース・由美子さんにお話いただきます。


それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!

ウェル ドレッシングの製作が行われているメソジスト教会で、マーガレット・ベイリーさん(78歳)にお話を伺いました。
今回は、マーガレットさんへのインタビュー(後半)の模様をお届けします。

【マーガレットさんへのインタビュー(後半)】

木島 ウェル ドレッシングの作り方を簡単に説明してください。
マーガレット
 作り方は地域によって多少の違いはあります。ウェイングローヴズ(※)では、まず木枠のついた台に粘土を貼り付けます。
この台と粘土をしばらく川に浸けておいて湿り気を持たせますが、ウェイングローヴズには川がありません。ここでは粘土だけを水に浸けます。
※産業革命発祥地のひとつであるダービー市から車で20分ほど北に行ったところにある小さな町。

写真左:粘土に水を含ませます。この仕事はマーガレットさんのご主人の担当。
写真右:粘土に刻まれた輪郭に沿って、黒の毛糸を埋めていく作業。

マーガレット 粘土の上に、先が細いものでデザインの輪郭を描き、黒の毛糸で線を埋めていきます。
(コーヒー豆で線を埋めるところもあります。)

木島 粘土はこの近くで採れるのですか?
マーガレット 近くにデンビーという有名な陶器工場があります。デンビーから、陶器に使う粘土を毎年180kgほど寄付してくれるのです。

木島 絵を表現するのに使うのは花びらだけですか?
マーガレット 花びらだけではありません。葉や種、豆類、コーヒー豆なども使います。
人間の肌は、卵の殻をレンジに入れて硬くしたものを砕いて使い表現します。
今回はピスタチオのナッツの殻を多く使っていますが、以前、メロンの種を使用した際、種が足りなくなってしまい、皆でメロンを買って種を調達しました。しばらくの間メロンばかり食べたこともありましたよ。(笑)

写真左上:衛兵の顔には卵の殻を使用。
写真右上:今年はピスタチオのナッツの殻を多く使いました。

写真左中段:花びらは完ぺきなものを選びます。
写真右中段:茎につながる部分を残して花びらを摘む作業は、集中と根気が必要。

写真左下:カクテルピック(爪楊枝を長くしたもの)を使います。
写真右下:メンバー左から、ドロシーさん、リンジーさん、ヒラリーさん。リンジーさんはこの教会で結婚式を挙げたそう。

写真上:製作に一週間かけて完成した作品は、教会の外に5日間飾られます。
写真中・下:絶滅の危機に晒されるイングリッシュブルーベルは、英国では保存植物に登録されている。

インタビューの最後に、「この近くでイングリッシュ・ブルーベルの咲く森に行きたい。」と話したところ、「ここから歩いて10分のところに、さっきお話しした(=前回のコラム参照)村人の森林があります。一緒に行きましょう!」と連れて行ってくれました。そして、そこには丁度満開のイングリッシュブルーベルが美しく咲いていました。

時にはジョークを言いながら楽しそうにウェル ドレッシングを作っている人たち。そこには、周りの人とのつながり、つまりコミュニティとのつながりがあり、大きく人の幸せに影響していることを改めて実感しました。

写真左上:デンビーの工場入り口にある、ティーポットからカップに注がれるお水。
写真右上:デンビーアウトレットのお店。

写真左下:高級ファームショップ。
写真右下:階段下にひっそりとあったディスプレイ。

<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>

英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。
2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。
現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、文化に関してのオンライン・トークを実施している。
バッキンガム州で夫、愛犬の3人暮らし。
その他、雑誌や新聞に寄稿。著書に『小さな村を訪れる歓び』や『イギリス人は甘いのがお好き』がある。

カルチャー・ツーリズムUKのホームページを見る

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