英国のティータイム

英国の老舗紅茶商「ファーラーズ(Farrerʼs)」(後編)

自分時間を大切にする英国の日常。その中心にはいつも紅茶があります。

一杯の紅茶から生まれる豊かな時間を、毎月英国の紅茶ブランドをピックアップしてお届けする【英国のティータイム】。

4月は、英国の老舗紅茶商「ファーラーズ」について。

〈前回の記事、【英国の老舗紅茶商「ファーラーズ(Farrerʼs)」(前編)はこちらから〉


英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話いただきます。

それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!


湖水地方の「ケンダル」という町にある、老舗紅茶商「ファーラーズ(Farrerʼs)」。

入口のフロアでは100種類以上のお茶が販売されており、上層階はティールームとなっています。

写真:1階の紅茶売場(右下)から階段でつながる各フロアは、ティールーム。

写真:お茶と一緒にいただく、英国伝統の焼菓子。


コーヒーを販売するフロアの床板は、200年前の“クリッパー”からリサイクルしたものだとか。

クリッパーとは、主に19世紀に中国からお茶を一刻も早く輸送するため、スピードを考えてデザインされた特別な船のこと。

ロンドン南東部の町「グリニッジ」に保存展示されている「カティ・サーク」は有名なので、見学されたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

200年前の航海を果たした船のことなどに思いを馳せながらいただくお茶は格別です。

写真:ファーラーズの床板にも思いがけない歴史がある。


とてつもなく大きなコーヒー・グラインダー(コーヒー豆を挽く機械)は1853年のもの。

1856年の台帳と共に大事に保管されています。


写真:オリジナルの、ヴィクトリア時代のコーヒー・グラインダー。「1853年」と年代が記されている。身体の大きな男性が、両手でグラインダーを回す姿が目に浮かぶよう。


オーナーであるレベッカ・グレイスさんが今朝焼いたというフルーツ・スコーンと、ファーラーズの紅茶「レイクランド・スペシャル」を飲みながら、インタビューをさせていただきました。


写真:スコーンに添えられたクロテッドクリームは地元のもの。


木島:美味しそうなスコーンですね。スコーンの中では、フルーツスコーンが一番人気なのですか?

レベッカさん:一番人気はチーズスコーンです。時間をかけてじっくり熟成させたチェダーチーズを使います。そして食べる時にトーストします。



木島:スコーンをトーストするのですか?初めてお聞きしました。どうやってトーストするのでしょう?

レベッカさん:グリルの下で焼くのです。



木島:そうですよね、トースターに入れるには厚すぎますよね。美味しそうです。私も今度試してみましょう。

ところでファーラーズはファミリー・ビジネスとお聞きしました。それはいつごろからですか?

レベッカさん:両親が1990年に店を買い取り、今は両親に代わって妹と私が運営しています。


木島:ファーラーズのお茶の中で、一番人気は?

レベッカさん:「レイクランド・スペシャル」です。しっかりしたセイロン茶をベースとした、濃い目のお茶です。

このあたりの地域は日本と同じ軟水です。「レイクランド・スペシャル」は軟水に適したしっかりしたブレンドです。

正に「ビルダーズ・ティー」(※)が好きな方にはうってつけと言えます。

でも、薄めに淹れても美味しいので、ここに初めてお茶を飲みにいらっしゃる方には「レイクランド・スペシャル」をお勧めしています。


※建設現場で働く人たち(=Builders)が好んで飲んでいた、濃くてしっかりしたお茶のこと。英国では「ビルダーズ・ティー」と言う。

典型的な「ビルダーズ・ティー」は、濃いお茶にたっぷりのミルクとたっぷりのお砂糖を入れた茶色に近いベージュ色のお茶。

写真:ファーラーズ「レイクランド・スペシャル」を持つレベッカさん


木島:そういえば、湖水地方のホテルに泊まると、お部屋に備わっているファーラーズのお茶はほとんどが「レイクランド・スペシャル」ですね。私はいつもミルクを入れますが、ミルクとよく合う美味しいお茶ですね。

その「レイクランド・スペシャル」の美味しい淹れ方は?

レベッカさん:4gの茶葉に沸騰したてのお湯を200ml注ぎ、3~5分蒸らしてお好みの濃さでお召し上がりください。おっしゃるようにミルクとも相性の良いお茶です。

日本の方には「ジュビリー・ブレンドティー」も人気です。召し上がってみますか?

これは、故エリザベス2世女王陛下のプラチナ・ジュビリーの記念として、中国の“キームン”とインドの“ダージリン”をブレンドして作りました。

ファーラーズ創立200年を記念して作った「アニバーサリー2019ティー・ブレンド」も人気です。

こちらは“ベルガモット”を入れたアールグレイ調のお茶で、インドの“ダージリン”やスリランカの“セイロン”をブレンドしています。


木島:(「ジュビリー・ブレンドティー」を飲む)

デリケートで優しさを感じるお茶ですね。

レベッカさん:「ジュビリー・ブレンドティー」は少し花の香りもして、日本の方々には「レイクランド・スペシャル」と同様に人気です。

ミルクを入れても入れなくても、一日中楽しめるお茶です。


木島:レベッカさんが個人的に好きなブレンドは?

レベッカさん:「レイクランド・スペシャル」と「ジェイド・ウーロン」です。

「ジェイド・ウーロン」は、緑茶に慣れるまでの過程として飲みだしたのですが、すっかり気に入ってしまいました。

ほんのり桃の香りがします。台湾中部の南投県で摘まれる茶葉で、発酵の時間を短くしています。


木島:レベッカさんは、習慣としてどのような時にお茶を飲まれますか?

レベッカさん:私の一日は、まずは朝仕事に来て最初に飲む、ミルクをたっぷり入れた2杯の「レイクランド・スペシャル」から始まります。

「今日も頑張ろう!」という気持ちにさせてくれます。午後はコーヒーを飲むことが多いですね。


木島:コーヒーではどのブレンドが人気ですか?

レベッカさん:「アニバーサリー・ブレンド」です。2019年にファーラーズの200周年を記念してブレンドしました。ブラジル、コロンビア、グアテマラ、インド、メキシコから、5種類のコーヒーを選んで作りました。

写真左:コーヒーカウンター

写真右:「アニバーサリー・ブレンド」


木島:お茶、コーヒー以外にも、食料品やティーポットなどのグッズも販売していらっしゃいますね。

レベッカさん:お茶に関係したグッズを販売しています。ティーポットの他にはマグカップ、ミルクジャグ(ミルクピッチャー)などを販売しています。

また、最近はデリが人気です。デリでは地元のものを中心に扱っていますが、イタリアの食料品も販売しています。

写真左:棚には、地元で製造された食料品が並ぶ。

写真右:お茶、コーヒーに関するグッズも。


木島:地元の食料品とは、例えばどういうものですか?

レベッカさん:例えば「コニストン・カントリー・キッチン」の“カンブリアン・ジンジャーブレッド”があります。また「ジンジャー・ベイカー」の“ダムソン・ブランデー・フルーツケーキ・ローフ”も人気ですよ。

写真:カンブリアン・ジンジャーブレッド

写真:ダムソン・ブランデー・フルーツケーキ・ローフ


木島:最近日本に行かれたとお聞きしましたが。

レベッカさん:はい、3月にローザンベリー多和田(※)の「ティーペイストリーズ(TEA PASTRIES)」のオープニングセレモニーに行ってきました。これからはここでもファーラーズのお茶を召し上がっていただけます。

※ローザンベリー多和田:滋賀県にあるイングリッシュガーデン。その敷地内に3月にグランドオープンしたパティスリーブランド「ティーペイストリーズ(TEA PASTRIES)」では、ファーラーズの紅茶が飲める他、オリジナルレシピのスコーンや、湖水地方を代表するお菓子“ジンジャーブレッド”、英国発祥のキャンディ“ファッジ”など様々なスイーツがお楽しみいただけます。

〈ローザンベリー多和田を訪れた際の記事はこちら〉

※モニターキャンペーンは終了しております。


木島:本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


ファーラーズのティールームでゆっくりお茶を飲んだ後、ロンドンではなかなか手に入らない地元の食料品をかごに詰めて、お店を後にしました。

200年前にジョン・ファーラーズが始めたお店は、ここだけがまるで時間が止まったように、お茶を通して人々に満ち足りた時間を提供し続けていました。


<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>

英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。

2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、

アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。

現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、

文化に関してのオンライン・トークを実施している。

バッキンガムシャー州で夫、愛犬の3人暮らし。

その他、雑誌や新聞に寄稿。著書に「小さな村を訪れる歓び」

「イギリス人は甘いのがお好き」がある。

カルチャー・ツーリズムUKのホームページを見る

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