英国のティータイム

英国・リバプールで始まった紅茶ブランド「ブリュー ティー カンパニー(Brew Tea Company)」(後編)

自分時間を大切にする英国の日常。その中心にはいつも紅茶があります。

一杯の紅茶から生まれる豊かな時間を、毎月英国の紅茶ブランドをピックアップしてお届けする【英国のティータイム】。

7月は、2012年に英国・リバプールでスタートした「ブリュー ティー カンパニー」について。

〈前回の記事【英国・リバプールで始まった紅茶ブランド「ブリュー ティー カンパニー(Brew Tea Company)」(前編)】はこちらから〉

英国バッキンガムシャー州在住で英国政府公認ブルーバッチ観光ガイドの木島・タイヴァース・由美子さんにお話いただきます。

それでは、木島さんの#英国ライフ・コラムをお楽しみください!



2012年にリバプールで創立し、たった10年間のうちに年間50トンのお茶を扱う企業に発展した「ブリュー ティー カンパニー」を訪問しました。

オーナーのフィル・カービー氏にお話を伺いながら、工場を案内していただきました。

工場では、「なるべく茶葉に損傷を与えないように機械を避け、人の手によって丁寧に作業が行われます。」とフィルさんが説明してくださいました。


写真左:アールグレイの茶葉が、「ネイチャーフレックス」(※)でできた袋に人の手で詰められる。

写真右:茶葉の袋を外箱に詰める最終段階の作業。

※「ネイチャーフレックス」:木のパルプからできている素材。環境にフレンドリーな商品を作ることを目指しているため、この素材を選択している。


出荷する際のボックス一つ一つに、受け取る人へのメッセージが。

こういうところに、「みんながハッピーに」というフィルさんの気持ちが表れている気がします。茶葉の箱の中に入っている、お茶に関する豆知識が書かれたティーカードもその一つです。


写真左:お茶に関する豆知識が書かれたティーカード

写真中央:小売店に送る際に、箱を開ける人の気持ちを考えて、「Make Tea Awesome(「お茶を素晴らしい、特別なものにしましょう!)」と書かれたテープを張り付けて出荷。

写真右:「今、あなたの素晴らしい一日が始まろうとしています。」と書かれたオンラインショップの箱。

オンラインショップでは1ヶ月に6000件を扱うとのことですが、発送する際の箱に貼られたテープから、受け取る人の気持ちを大事にしていることがうかがえます。


写真左:パッキングした人の名前のシールが更にパーソナルな感じを与えている。

写真右:トレードマークの黄色と白の包装紙に包まれて、発送の準備が完了。


写真:マグカップやポットなどのグッズも人気

さて、今回の取材の締めくくりは、「ブリュー ティー カンパニー」のテイスティングとブレンドです。

マニュアルを見ながら、フィルさんのアドバイスを基に私個人のお茶をブレンドしました。


写真左:テイスティングとブレンドをするテーブル。これから私のオリジナルのお茶のブレンディングが始まる。

写真右:テーブルに置かれたマニュアルにはテイスティング、ブレンド作りに関するインフォメーションが書かれている。

ブレンディングは3段階に分かれています。

最初のステージはベース(基礎)となるお茶の選択です。「アッサム」「ケニア」「デカフェ」(カフェインを除去したもの)が用意されています。

「濃いお茶にするのか?または、さわやかなお茶か?朝眠気を覚ますお茶か?それとも一日中飲むお茶か?」などを考えながら一つ選びます。

私は朝に飲むことが多く、毎朝濃いめのアッサムを飲んでいるので、今回もアッサムを選びました。


写真左:フィルさんからのアドバイスを基に、私のオリジナルのブレンド作りが始まる。

写真右:テーブルに並べられた9種類のお茶

次のステージでは、「ユンナン」「キームン」「コロンビアン」の中から選びます。

第一段階で選んだお茶を、「更に濃くするのか?または濃さを控えめにするのか?」などを考えながら次のお茶を選びます。

コロンビアと聞けばコーヒーですよね。フィルさんに伺ったところ、「ブリュー ティー カンパニー」でコンサルタントをしている女性が素晴らしいコロンビアのお茶を見つけた、とのこと。そこでアッサムで濃さは十分出ているとは思いましたが、フィルさんの自信作を試したいという興味の方が勝って、濃い目と言われたコロンビアのお茶を選びました。


最後のステージです。「花の香りを好むか?それとも蜂蜜の香り?または新鮮な味わいを好むのか?」などで、「ダージリン」「セイロン」「ニルギリフロスト」の中から選びます。

「ニルギリフロスト」は、霜が降りた後で摘まれたニルギリ茶のことです。ここでは私は「ニルギリフロスト」を選びました。

それぞれの茶葉の量はフィルさんにお任せしました。こうして私は初めて、自分のための特別な紅茶のブレンドを経験したのです。

「濃すぎるかな?」と少々心配しましたが、フィルさんがそれぞれの茶葉の量を加減してくださったので、飲んでみるととても美味しく満足。


写真左:それぞれの茶葉の量はフィルさんにおまかせ。

写真右:出来上がったブレンドを5分間蒸らす。

お茶そのものだけではなく、世界の人がハッピーに暮らせる世の中を作り出すために、環境も考えたビジネス。見えないところにまでこだわっているお茶は、それだけで特別なお茶に思えます。

普段はコーヒー党の主人も、「ブリュー ティー カンパニー」のコンセプトを知った上で飲んだ、一番人気の「イングリッシュブレックファースト」で紅茶への興味が広がったようです。


写真左:一番人気の「イングリッシュブレックファースト」の黄色の缶。

写真右:シンプルなパッケージ。缶や箱の色でお茶の種類がわかる。

ブレンドが完成したところで時計を見たら、なんと列車の時間まで30分しかありません。

すぐにタクシーを手配していただいて、猛スピードでマンチェスター・ピカデリー駅に。ところがまたまた列車の発車が一時間ほど遅れるとのこと。

フィルさんの言った「列車が走るだけでも奇跡なのだから。」という言葉を思い出し、お茶の余韻に浸りながら駅構内のレストランで遅めのランチをゆっくりいただきました。


写真:マンチェスタ・―ピカデリー駅。


<木島・タイヴァース・由美子 プロフィール紹介>

英国政府公認ガイドとして30年以上にわたって英国全土の観光案内をする。

2015年に英国の文化に特化したツアーの企画、アドバイスを専門に扱うカルチャー・ツーリズムUKを設立。

現在は観光ガイドの他に毎月英国の観光、文化に関してのオンライン・トークを実施している。

バッキンガムシャー州で夫、愛犬の3人暮らし。

その他、雑誌や新聞に寄稿。著書に「小さな村を訪れる歓び」「イギリス人は甘いのがお好き」がある。

〈カルチャー・ツーリズムUKのホームページを見る〉

※記事に掲載されたイベント情報や商品は、売り切れ・変更・終了する場合がございます。
※売り切れの節は、ご容赦ください。
※表示価格は、消費税を含んだ税込価格です。